一人ひとりの発達段階に合わせ、課題を小さなステップに分けて練習します。
子どもが喜ぶ結果で望ましい行動を強化し、自信を育てます。
教室で身につけたことを、家庭や園・学校でも使えるように支援します。

応用行動分析という、自閉症等の障害にたいしてエビデンスの有効性が実証されている、数少ないもののひとつです。それはどういうことかというと、アメリカ心理学会などの専門機関が示している有効基準を満たしているということになります。その為、アメリカでは行政のプログラムに、幼少のころからこれが採用され、制度として無料で受けることがある州があります。
子どもにとって発達介入は時間との勝負なので、これはきわめて重要なことなのです。聞こえがいいだけで、有効性に欠けた介入法に時間を浪費してはいけません。なぜなら自閉症等の診断を受けたら、いろいろな支援が必要であり、介入が必要になるのです。介入が早ければ、改善はスムーズに進みます。遅すぎるとダメということはないのですが、認知発達のための言語発達遅滞や社会性の介入は早い方が良いのです。
ABA(応用行動分析)は、自閉症児のことば・コミュニケーションの発達を促す可能性があります。
特に、遊びや日常生活の中で行う自然なABA系アプローチや、必要に応じてAAC(絵カード・意思伝達装置など)を組み合わせる方法も注目されています。
効果は、年齢、現在の発語・理解力、介入時間、家庭での関わり方などによって大きく変わります。

ABAの「ことばへの効果」は、年齢だけでなく、開始時の発達水準・言葉の理解・模倣・知的発達・介入の質や量でかなり変わります。そのため、年齢別の目安として見てください。
この時期は、ABAを使って「話すこと」そのものより、コミュニケーションの土台を作ることが重要です。
早期介入では、こうした社会的コミュニケーションや言語能力の改善が期待できます。ただし、この年齢でABAを始めれば必ず発語が増える、ということではありません。
ことばの発達を伸ばすうえで非常に重要な時期です。例えば「車」→「車ちょうだい」→「赤い車ちょうだい」というように、単語から2語文・3語文へ広げる練習ができます。
研究全体では、早期のABAを含む行動的介入によって言語・コミュニケーションに小~中程度の改善がみられることがありますが、研究間の差もあります。
この頃になると、単に単語を増やすだけでなく、「実際の生活でことばを使えるか」が重要になります。ABAでは例えば「ジュース」だけ→「ジュースください」→「冷たいジュースください」のように、より複雑な表現へ発展させます。
この年齢でも改善は十分期待できます。ただし、訓練中には話せるのに、日常生活では使わないということがあるため、自然な遊びや生活場面で練習することが重要です。
この時期は「発語を出す」だけではなく、「言葉を使って人とコミュニケーションする」ことが中心になります。
ABAはこうしたスキルを細かく分けて練習するのに向いています。一方、年齢が上がったからABAの効果がなくなるわけではありません。学童期からでもコミュニケーションや適応行動の改善は可能です。
この時期は、発語そのものよりも、次のようなことが重要になります。
ABAはこれらの具体的な行動・コミュニケーションスキルを教える方法として利用できます。

子どもが「望ましい行動を学ぶ」ために、学習を小さな1回1回の練習(試行)に分けて、繰り返し教える方法です。特に、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもの、言語・コミュニケーション、模倣、認知、身辺自立、社会的スキルなどを教える際に用いられます。
① 教示(Antecedent)→ ② 子どもの反応(Behavior)→ ③ 結果・フィードバック(Consequence)
例えば、「赤いものを取って」と教える場合です。
| 段階 | 支援者 | 子ども |
|---|---|---|
| ① 教示 | 「赤を取って」 | |
| ② 反応 | 赤いカードを取る | |
| ③ 結果 | 「そう!赤だね!」+好きな物を渡す | 喜ぶ・報酬を得る |
| ④ 次の試行 | 少し間を置いて再び問題を出す |
これを何回も繰り返し、正しい反応が起こりやすくなるように教えていきます。
支援者「りんご」 → 子ども「……ご」 → 支援者「そう!りんご!」+好きなお菓子などを渡す
このように、最初から完璧な「りんご」を求めるのではなく、子どもの現在の能力に合わせて近い反応も認めながら、徐々に目標に近づけることがあります。
DTTでは、子どもが間違うのをただ待つのではなく、必要に応じてプロンプト(手がかり・援助)を使います。例えば「赤いカードを取って」と言っても分からない場合、次のような援助をします。
そして、できるようになったら、その援助を少しずつ減らしていく(プロンプト・フェイディング)ことが重要です。
「手伝ってできる」→「少しの手助けでできる」→「自分でできる」という状態を目指します。
DTTでは、強化(reinforcement)が非常に重要です。例えば、子どもが「ボール」と言えたら、本人にとって価値のある結果を与えます。
重要なのは、「大人が褒めたいもの」ではなく、「子どもが実際に喜ぶ・欲しがるもの」を強化子として使うことです。
支援者「赤を取って」に対して子どもが青を取った場合、「違う!青じゃない!」と強く叱ることがDTTの目的ではありません。例えば、次のように進めます。
自然な場面では、子ども「ジュース」→ 大人「ジュース飲みたいの?」→ 子ども「うん」→ 大人「どうぞ」というように、実際の生活の流れの中でコミュニケーションを学びます。一方DTTでは、「これは何?」→「りんご」→「正解!」+強化というように、特定の技能を意図的に切り出して練習することが特徴です。
DTTは「何度も繰り返して覚えさせればよい」というものではありません。特に、次のようなやり方には注意が必要です。
DTTで身につけた技能を、別の人・場所・教材でも使えるようにする(般化)ことが非常に重要です。
ただし、実際のABA支援ではDTTだけを行うのではなく、自然な環境での指導と組み合わせることがよくあります。

ABA(応用行動分析)におけるPRTは、発達障害、とくに自閉スペクトラム症(ASD)の支援で使われる行動療法の一つです。
「子どもの行動全体を一つずつ教える」のではなく、「動機づけ」「自己管理」「複数の手がかりへの反応」など、発達に大きく影響する“中核反応”を伸ばすことで、他の行動にも波及させることを重視します。
例えば、子どもが車のおもちゃを欲しがっている場合、「車」と言うことを強制するのではなく、子どもが「車」「ちょうだい」など適切なコミュニケーションをしたら、すぐに車を渡して遊べるようにする、といった形です。

Naturalistic Developmental Behavioral Interventionsの略です。自閉症スペクトラム(ASD)の幼児などを対象に、日常生活や遊びなどの自然な場面で、発達支援とABAの行動原理を組み合わせて行う介入を指します。
子どもの発達段階に合わせ、遊びや日常生活の中で「子どもが今やりたいこと」を利用して、コミュニケーション・遊び・社会性などを教える方法です。研究では言語、社会的コミュニケーション、遊び、認知などへの効果が報告されています。
| 発達段階 | ねらい | 具体的なNDBIのやり方 |
|---|---|---|
| ① 前言語期 | 視線・共同注意・要求 | 子どもが好きな玩具を見せ、すぐ渡さず「見る→手を伸ばす→声を出す」などの行動を待つ。少しでも伝えようとしたらすぐ応じる |
| ② 単語が出始める時期 | 要求語・模倣・単語 | 子どもが車を欲しがったら「くるま」と短くモデル提示。子どもが「ま」だけでも言えたら車を渡す |
| ③ 2語程度が出る時期 | 語彙・2語文・会話の往復 | 「車」→大人「赤い車」→子「赤い」など、子どもの発話を少しだけ広げる。質問攻めにしない |
| ④ 会話が増える時期 | 会話・共同遊び・問題解決 | ブロック遊びで「どうする?」と待つ。子どもの提案を取り入れ、「一緒に作る」経験を増やす |
| ⑤ 就学前後 | 社会的コミュニケーション・柔軟性 | ごっこ遊び、ルールのある遊び、友達とのやり取りの中で「誘う」「順番を待つ」「断る」「助けを求める」を練習 |
| ⑥ 学童期 | 自立・社会参加 | 実際の学校生活や家庭生活で、予定変更、依頼、会話、買い物、友達との協働などを自然な場面で練習 |
NDBIでは、年齢そのものよりも「現在の発達レベル」から次の一歩を設定することが重要です。子どもの興味に合わせ、自然な結果を強化として使い、大人と子どもが活動の主導権を共有するのが基本です。
例えば「3歳・単語は10語程度・要求は手引きが中心」なら、いきなり会話練習をするのではなく、興味を引く → 子どもの行動を待つ → ジェスチャー/声/単語を受け止める → すぐ結果を返す → 少しだけ発達的に上の行動をモデル提示、という流れにします。
NDBIを家庭で練習するなら、子どもの好きな遊びを使って、1日10分から始めるのが具体的です。
ポイントは、「10分間ずっと教える」のではなく、「子どもが楽しく遊んでいる中に、数回だけ学習機会を入れる」ことです。

発達障害などで、言葉でのコミュニケーションが難しい人に使われる方法です。基本は、「欲しいものの絵カードを相手に渡して、要求を伝える」ところから始めます。
例えば:ジュースのカードを取る → 支援者に渡す → 支援者が「ジュースだね」と言う → ジュースを渡す
PECSは単に「絵を見せて意思表示する」だけではなく、本人が自分からカードを相手に渡してコミュニケーションを始めることを重視します。
療育にインリアル・アプローチを取り入れる価値は十分あります。ただし、「インリアルだけを行う」というより、その子のコミュニケーション特性に合わせて療育の一部として取り入れるのが適切です。
特に相性がよいのは、発語が少ない、要求はできるがやり取りが続きにくい、質問されると答えられるが自分から話すことが少ない、オウム返しが多い、大人からの質問・指示が多くなっている、といった場合です。
インリアルの大きな利点は、子どもを訓練するだけでなく、大人の関わり方そのものを変える点です。たとえば、子どもがミニカーを動かしているとき、
「これは何色?」「車は何台?」「赤って言って」
と課題を次々出すのではなく、
「ブーン」「走ったね」「速いね」
など、子どもの注意や行動に合わせて短く返します。そして子どもから何か反応があれば、さらにそれを受け取ってやり取りを続けます。
この方法は、「正解を言えたか」より、「自分から相手に伝えたくなったか」を重視するところに特徴があります。
一方で、インリアルですべてをカバーする必要はありません。たとえば、絵カード・AACが必要な子にはそれを併用できますし、生活動作、感覚面、運動面、行動上の課題などは、それぞれ別の評価や支援が必要になることがあります。
療育で導入するなら、私は「インリアルを採用するか否か」より、まず現在の大人と子どものやり取りを動画などで分析して、具体的な目標を1~2個決める方法をおすすめします。たとえば「質問を減らして待つ時間を増やす」「子どもの発話+1語程度で返す」「自発的な発信の回数を見る」といった目標です。数か月後に、自発的な発信ややり取りの往復が実際に増えているかを評価すれば、その子に合っているか判断しやすくなります。
インリアルでは、子どもの自発的なコミュニケーションを引き出すために、代表的に7つの言語心理学的技法が用いられます。
| 技法 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| ① ミラリング(Mirroring) | 子どもの行動をそのまま真似する | 子どもが積み木をトントンする → 大人もトントンする |
| ② モニタリング(Monitoring) | 子どもの発声・ことばをそのまま真似する | 子「ブーブー」→ 大人「ブーブー」 |
| ③ パラレル・トーク(Parallel Talk) | 子どもがしていることや気持ちを、大人がことばにする | 車を走らせている →「車、走ってるね」「速いね」 |
| ④ セルフ・トーク(Self Talk) | 大人自身がしていることをことばにする | 箱を開けながら →「開けるよ」「あ、開いた」 |
| ⑤ リフレクティング(Reflecting) | 子どもの不完全なことばを、意味をくみ取って自然な形で返す | 子「ワンワン、いた」→ 大人「ワンワン、いたね」 |
| ⑥ エキスパンション(Expansion) | 子どもの発話に少しことばを加えて広げる | 子「くるま」→ 大人「赤い車だね」 |
| ⑦ モデリング(Modeling) | 子どもが言いたそうなことを推測して、適切な表現のモデルを示す | おもちゃに手を伸ばす →「貸して」/「ちょうだい」 |
7つの技法を全部使おうとするより、まず「子どもをよく見る → 待つ → 子どもの発信に合わせて返す」ことが重要です。
たとえば、シャボン玉遊びなら、
子:シャボン玉を見る
支援者:「……」(待つ)
子:「あ!」
支援者:「あ!」【モニタリング】
子:「いっぱい!」
支援者:「いっぱい飛んだね!」【エキスパンション】
子:もっとやってほしくて容器を見る
支援者:「もう一回」【モデリング】
という具合です。
ここで重要なのは、「『もう一回』って言って」と復唱を要求しなくてもよいことです。大人がモデルを示し、子どもが「伝えると相手が応えてくれる」という経験を積めるようにします。

リンゴは、赤くて、丸くて、美味しくて、果物で、木になっていて、近くのスーパーで100円ぐらいで売っている。そして、私はそれを買うことができる。これが認知の形です。
「もの」や「こと」を「つながり」で捉える総合的な力であり、「私」との関わりをつくってくれます。認知を伸ばすことで、この世界に生きる「安心感」や「充実感」を得ることができるのです。
他の人がどんな言葉を話しているのか、どの建物が何をしているところか、誰に聞いていいのかもわからない。不安になってしまいそう。
モノの名前も使い方も、住んでいる町の建物もわかる。他の人とコミュニケーションがとれる。とっても安心感がある。